裏腹な彼との恋愛設計図
『鈴森のことは信じてるし、それに……あいつのことを好きだっていう自分の気持ちも信じてるから』


そう、言ったらしい。

タイムカプセルに入っていた名前を書いた紙や、確かな証拠がなくても、彼は本当に私のことを信頼してくれていたんだ──。

改めてそれを実感して、じんわりと目頭が熱くなった。


「そんなふうに言われちゃ、あたしなんか敵うわけないなって、やっと諦めがついたわ」


岩坂さんは清々しさを感じる笑顔で言い、アイスティーを口に含んだ。


「隼人が過去に何かを抱えていることには気付いてたけど、あたしには何も教えてくれなかったし、あたしも彼が話したくないなら無理に掘り起こさない方がいいと思ってた。

でも根本から違ってたのね。隼人がすべてを見せられる相手は、あなたじゃなきゃダメだったのよ。それ以前に、好きだとか言われたこともないしね」


ほんの少し自嘲気味に笑って、琥珀色の液体が入ったグラスを見つめる岩坂さん。

そんな彼女を慰めるわけではなく、私は本当に思ったことを口にする。


「でも、隼人さんにとって岩坂さんもきっと特別な存在ですよ。彼がずっと一緒にいられる人は、たぶんすごく限られた人だと思うから」


隼人さんは、岩坂さんと一緒にいるのが心地良かったから付き合っていたはず。

彼がそんなふうに思える人、特に女性は、きっとごく僅かだろう。

< 272 / 280 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop