裏腹な彼との恋愛設計図
「えーえー! 古賀さんー!?」

「うるせぇ。この間ようやく付き合うことにしたみたいだけど、たぶん気付いてないのお前だけだぞ」

「うそぉ!」


まさかそんなことになっていたなんて!

給湯室と繋がっているオフィスをチラリと見やると、肩を寄せ合って玄関へ向かう二人の後ろ姿が見えた。

そうか、だから今古賀さんも残っていたのか。私ってやっぱり鈍感……。


突っ立ったままの私からトレーを奪うと、さっさとコップを洗ってくれる隼人さん。

慌ててコップを拭こうと棚に置いてある乾いたふきんに手を伸ばすと、ふきんの上に置かれていたファイルをバサッと落としてしまった。


「わ! ごめんなさい!」


床にばらまいてしまった隼人さんのものと思われる書類を、忙しなく集めていると。

見慣れない設計図を一枚見付けて、なんとなく眺めた。

これ、お客様のものじゃない。施工主の名前が書いてないし……。

もしかして隼人さんが書いたもの?と思いながら、左手にはファイルを抱えて立ち上がる。すると。


「おい、勝手に見るな」

「ひゃ!」


──ドン、と壁に背中をぶつけた私の顔の横には、隼人さんの握った手がつかれている。

至近距離に迫る、おキレイだけど不機嫌そうな顔。

久々にされた壁ドンは、ドキドキするけれどやっぱり甘くない。

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