裏腹な彼との恋愛設計図
「鈴森」

「は、い……？」


低過ぎず、高くもない、耳に心地良い声が私を呼ぶ。

ドキドキが最高潮に達した、その瞬間。


──バシッ！と、手をつかれた方とは逆の耳に、けたたましい音が鳴り響いた。


「きゃぁ！？」


思わず叫んでビクッと肩をすぼめると、目の前の彼の整った眉が中央に寄せられた。


「……やり直し」

「へ？」

「この記事を今すぐ書き直せ」

「えぇ！？」


私の顔の横でバシバシと叩き付ける資料を見やると、それはついさっき私が試しに印刷してデスクに置いておいたニュースレターだった。


ニュースレターとは、お客様へ送る月に一度の広告。

私達の会社の宣伝や、土地の価格表、お客様の声などを手書きやパソコンを使ってまとめたものだ。


先月、以前働いていた会社から転職し、ここにアシスタントとして入社した私がこれを担当したのは初めて。

自由に書いていいとは言われたけれど、結構気を遣って読みやすくまとめたつもり。

それなのに、どこがダメだったんだろう？


「や、やり直しって……何で、どこがいけないんですか？」


身を縮こまらせたまま尋ねると、彼はその用紙のある一部分を、私の顔に押し付けるようにして見せてきた。

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