裏腹な彼との恋愛設計図
柊さんは私の言葉に浅く頷いた。


「……そう。あのシーンを見て、家ってやっぱりいいなって思った。ああいう皆が帰る温かい場所を俺も造りたいって思ったのが、たぶんこの仕事に就いたきっかけ」


──本当に、私と同じだ。

私も同じことがきっかけで、住宅関係の仕事をしたいと思うようになったから。

誰にも話したことはないのに、まさか柊さんと解り合えるなんて。


「……またニヤついてるぞ」

「だって、嬉しいから。同じものを見て、同じ夢を共有してたんですよ? すごいことじゃないですか!」


ちょっぴり興奮気味に言うと、柊さんはまた呆れたように、でも少しだけ恥ずかしそうにして目を伏せた。


「でもよく知ってましたね、あの映画」

「結構有名だっただろ。今もたまにテレビでやるし」

「……知らない人もいますよ」


あの彼──三好くんは知らなかったな。

当時も私は映画の魅力について語った覚えがあるけど、彼はキョトンとしてたっけ。

……どれもこれも、懐かしい思い出。

段々と色褪せていく、過去のものだ。

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