裏腹な彼との恋愛設計図
彼のオンとオフの切替は完璧だ。

お客様を見送り姿が見えなくなった途端、スッと音がするくらいの無表情に変わる。

そしてオフィスの中では滅多に笑顔を見せない。こうして二人きりでいる今も、例外なく。

それが少し不満でもあって、私は突き返された用紙で口元を隠しながら正直に聞いてみた。


「柊さん、お客さんの前だとすごく愛想いいのに、接客中以外はどうしてこんなに……その、冷たくなるんですか?」

「別に冷たくしてるつもりはない。こっちが普通だ」

「普通、ですか」

「けどまぁ、あえて言うなら……」


ビジネスバッグを持ち、片手をポケットに入れた彼が再び私に近付く。

そして、色っぽく見える流し目を向けながらこう言った。


「俺に冷たくされてオドオドしてる鈴森を見るのが、意外と面白いから」

「……えっ」

「お前、絶対ドMだろ」


──ドッキーン。

見事に言い当てられて、目を見開いた私はみるみる顔が熱くなっていく。


えぇそうです。

冷たくされても嫌じゃない……いや、むしろもっとイジメられてもいいなんて微かに思ってしまう私は、自他ともに認めるドMです!

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