裏腹な彼との恋愛設計図
今日のデートが終わったらちゃんと言おう、“矢城くんとは恋愛出来ない”って。

そう決意して、映画館が見える通りまで来た時。

何気なく見やった通りの向こうのカフェ内に、思わぬ人物がいるのを目にしてしまった。


「それでラストに主人公が……あれ、紗羽さん?」


突然立ち止まった私を、矢城くんが不思議そうに振り返った。

そして固まったまま逸らせない私の視線の先を辿り、同じ方を見て目を凝らしている。


「ん? あれって……柊さん、ですよね?」

「……うん」


いつものスーツ姿ではないけれど、整ったあのお顔は遠目でも柊さんだとわかる。

しかも、向かい合って座っているのは──ショートヘアの女性。

顔までは見えないけれど、服装からして二十代だと思う。

……二人は、どんな関係?


「え、もしかしてデート!? 柊さんって恋愛とか興味なさそうだと思ってたけど、普通に彼女いたんだ」


スクープを発見したように、ちょっぴり興奮気味に言う矢城くんの言葉が、何故かチクリと胸に刺さった気がした。

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