裏腹な彼との恋愛設計図
そのまま少しだけ二人を観察していると。

立ち上がった女性が柊さんの横を通り過ぎようとした時、彼は引き留めるように彼女の手首をぐっと掴んだ。

──ドクン、と心臓が重い音を立てる。


「何だ? まさか修羅場?」

「……違うでしょう」


驚いたような矢城くんの声に、私は渇いた笑いをこぼしてそう返し、その場から立ち去ろうと歩き始めていた。


……胸がざわつく。

何で。どうしてこんなに動揺してるの、私。

あんなにカッコいい柊さんだもの、そりゃ彼女くらいいるでしょ。

彼女じゃないにしたって、休日に女の人と二人で会ってたって何も不思議じゃない。

なのに、どうしてこんなに──。


「紗羽さん、どこまで行くの!?」


背後から聞こえる矢城くんの声に、はっと我に返る。

私ってば、映画館通り過ぎちゃってるじゃん!


「あ……アハハ、なにやってるんだろ私! ごめんごめん」

「紗羽さん……?」


頭を掻きながらUターンして映画館に入る私を、矢城くんは怪訝そうに見ていた。


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