裏腹な彼との恋愛設計図

──ずっと見たかった映画なのに、内容が頭に入ってこない。

代わりに脳内を締めているのは、さっき見た柊さん達のワンシーン。


振り向いた時に彼女の顔が見えたけど、綺麗な人だったな……。

いったい何を話していたんだろう。


あの時の柊さん、すごく真剣な顔をしてた。仕事の時とはまた違う、特別な表情。

誰も知らない一面を、彼女には見せているのかもしれない──。




「あー面白かった! ね、紗羽さん」

「えっ」


隣に座る矢城くんが、私に笑いかけている。

いつの間にか館内は明るくなっていて、映画が終わったのだと気付いた。


「あの終わり方は卑怯だよな~。絶対続き見たくなるじゃないっすか」

「あ、うん、そうだね……!」


ごめん、矢城くん……なんか全然覚えてないや。

失礼過ぎるよ、私。いくら恋人同士のデートじゃないとしても、二人きりで見に来てるっていうのに、別のことばっかり考えているなんて。

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