裏腹な彼との恋愛設計図
映画館を出ると、街は夕焼けでオレンジ色に染まっていた。

まだまだ暑さの残る街を駅に向かって二人で歩く。

浮かない気分を引き連れて歩く私を、矢城くんが心配そうに覗き込んだ。


「紗羽さん、大丈夫?」

「え?」

「なんかさっきから口数少ないから、具合でも悪いのかと思って」

「あ、ううん全然! ちょっと考え事してただけ……」


気を遣わせてしまった。

申し訳ない気持ちと、どうしてか心此処にあらずな状態になっている自分への戸惑いが入り混じる。


そんな私を見て、矢城くんは軽く深呼吸するようにひとつ息を吐き出す。

そして足を止めると私と向き合い、真正面から見つめてきた。


「あの映画って、二部作なんですよね。……紗羽さん、また俺と一緒に見てくれますか?」


……まっすぐな視線が痛い。

でも、ちゃんと目を見て言わなくちゃ。


「……ごめん、矢城くん」


街の雑踏の中で、私の重々しい声が響く。

その言葉をいくらか予期していたように、矢城くんは静かに目を伏せた。

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