裏腹な彼との恋愛設計図
一瞬あられもない妄想をしてしまった自分に、再びため息。

ただの荷物持ちだもんね、私。車内で柊さんに迫られるなんてことあるはずないよね、ははは……。

それでも彼を間近に感じたのには違いないわけで、私の胸はいまだにドキドキと踊っている。


振り向いてみれば、すでに絵梨子さん達は外に出ているし、着いたことにも気付かないなんて……しっかりしろ私!

いそいそとシートベルトを外していると、車から降りようとした柊さんが振り返ってこう言った。


「お前、最近陰湿だぞ。ため息ばっかついてるし。何か悩みでもあるなら誰かに相談しろよ」


──トクン、と胸が鳴る。

言い方はきついけど、私のこと少しでも気にかけてくれてるんだよね?

たったそれだけのことで、こんなにも嬉しい。


「柊さん……」

「ただし、相談するのは俺以外でな」


あうっ。

やっぱり最後にトゲを刺すのはお決まりなのね……。まぁ悩みの原因である張本人に相談出来るはずもないけれど。


無情にもドアがバタンと閉められる。

けれど、その窓越しに見える彼の背中は、いつもよりも温かいものに思えた。


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