裏腹な彼との恋愛設計図
「……よかったのか? 俺を家なんかに上げて」


不意に発せられた彼の声に、また私の手が止まった。


「え、それはどういう……」

「矢城がいるのに、俺と二人になってよかったのかってこと」


投げやりにもとれる口調で言われ、私はぽかんとしてしまう。

何で矢城くんが出てくるの?

……という私の疑問をわかっているように、柊さんは無愛想なままこう言った。


「抱き合ってただろ。この間、街中で」


──ギクリと、胸の高鳴りは一瞬で嫌な音に変わった。

み、見られてたの!? 映画館に行った後の、あの場面を……!

柊さんはそれで私達のことを誤解しているんだ。


「あれは……誤解です!」

「別に隠さなくていい」

「違うんです、本当に急に抱きしめられただけで……! 私は、彼に恋愛感情はないから」


自分で言ってて、さっきとはまた別の、矢城くんに対しての罪悪感が沸き上がる。

でもこれは本当のことだし、あのハグだって不可抗力というか何と言うか……!

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