裏腹な彼との恋愛設計図
一日の始まりはガーデンで
私、鈴森紗羽(スズモリ サワ)は、先々月まで大手の住宅会社に勤務していた。
全国展開していて立派な住宅展示場を持ち、知名度もある。
大学を卒業してから約六年間、事務員として働いたその会社を辞めるのはかなり勇気がいることだった。
なぜなら、転職先のここミライトホームは、以前とは真逆の小さな住宅会社だから。
オフィスは県内に二カ所だけ。大きな住宅展示場は持たず、CMやカタログなどで宣伝は一切しない。
私が働く本社でも、スタッフは社長を含め、全部で七人しかいないのだ。
しかし、それはすべてお客様のため。
出来るだけ低価格で家を建てたいという願いを叶えるために、展示場や宣伝に使う費用を削ってコストを抑えているのだ。
展示場を作る費用が、最終的にお客様の建築費から出ていると知った時、私はショックを受けた。
お客様に始めに提示する建築費を安くしておいて、後からオプションで追加していく営業のやり方にも。
それまでただの事務員で満足していた私は、そんな現実を知ってから、これでいいのかと疑問を持つようになっていた。