裏腹な彼との恋愛設計図
思わずギュッと目をつぶると。

唇に触れる感覚はなく、代わりに耳元に甘い空気が降りかかる。


「──だったら、疼いたままでいろ」


吐息混じりのセクシーな声が紡いだのは、ぞくりとするほどのドS発言。

ピシッと硬直する私に、彼は意地悪な笑みを浮かべる。


「残念だったな。俺は焦らすのが好きなんだ」


じ、焦らすのが好き!?

なにそれヤメテ! ドMの急所を突かないで!!

……じゃなくて、絶対またからかってるでしょうこの人!


沸騰したように顔を真っ赤にしているだろう私から離れ、腰を上げた柊さんは、器用に片手で包帯を巻きながら淡々と言う。


「発情期のドMオンナってのも男にとったらたまんねーけどさ」

「は、はぃ!?」

「雰囲気に流されて痛い目見るのは女だろ。もっと警戒しろよ」

「っ……」


柊さん──違うよ。

今の雰囲気はたしかに流されそうになったけど、私はあなたのことが好きなんだから。

キスしたいって思ったのは、ただの軽い気持ちじゃないの。

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