海ホタル

砂利道の隅に黒く光ったバイクが置いてある。
雨に濡れたそのバイクは、不思議と自分を見ているようだった。
「バイク、ですか」
「嫌なら地図やっから歩いていけ」
と、ガレージから真っ黒なヘルメットを出した。
それを私にかぶせると、またがってエンジンをかけた。
凄まじい勢いで、エンジンがかかる。
ガソリンの匂いでむせそうになった。
「乗れ」
と、後ろをポンポンと叩いてあの目で私を呼んだ。
恐る恐るゆっくりのると、彼の手が私の手を掴み、彼の腹に回した。
「しっかり捕まってろよ」
そう言うとバイクはゆっくり走り出した。