海ホタル
「ここですかねお嬢様」
「ありがとーございました」

さっさとバイクを降りて学校に行こう、と思った。



「ママが怒るね」


イヤミを言うかのように、眉毛をくねらせて。
でも笑顔。
頭ん中おかしくなる。


「いないし」
事情も知らないで軽々口にする彼に苛立ち、言い捨てると頭を浅く下げて背を向けた。


「ごめん!俺もいないから!」

少し高い声で、去ってゆく私を引き止める。
「なぐさめないで。いらないからそうゆうの」

信じれなかった。
余計ムカつくというのがあったきぶんだ。


「嘘な訳無いじゃん。16からキャバクラの呼び込みとスタンドで働いてるかわいそうなやつっすよ」


笑顔で言った。


ただ、笑顔で、そういった。









バカみたいに笑う、寂しい目をした男だった。

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