海ホタル
なにかが音を立てた。という表現しか見当たらない。
そんな物が落ちる音がして振り返った。
ケータイ。の向こうに小さな小さな赤色の明かりがゆらゆらと揺れて、細い煙もうっすら漂っているのが分かった。

「はっ、イマドキ女子高生がガラケーですか」
と、タバコを吸って、吐いて。
彼は笑うのが上手なだけ。

「うるさい」
尖らせる。尖らせたい。いや、
尖らせなければならなかった。


「ガラケー、しかも白とか。」
父のおさがりの古いあたしのガラケーが、自動販売機の光に照らされて、ケータイは寂しいよと泣いていた。

「なぁに、泣いてんの」

聞いたこともない彼の優しい声が、胸にじわりと染みたのが分かる。

自動販売機の光に照らされたケータイをなぜか涙をポタリポタリ流しながら見つめていた。
苦しい。と思った。
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表紙・目次

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