海ホタル
「…香水くさい」

彼の胸から漂ってくる香水の匂いが鼻の奥の底を突く。

「まぁ、女と男に囲まれた仕事だからな」

どうしてだろう。

ただ彼の家に泊まっただけなのに

バイクに乗せてもらっただけなのに

プリンをもらっただけなのに

抱きしめてもらっただけなのに



彼とずっと前からの知り合いかのように
こんなにも近くに感じる。
彼の目が
なんだかわたしの心を見透かしているようで
同じ景色を見てきたようで


他人だなんて思えない。
< 31 / 40 >

この作品をシェア

pagetop