海ホタル
皆に知られている通り貧乏だから、普通の女の子のするようなオシャレをしたことがない。
そんなあたしは毎日バーゲンのジャージで過ごす。

「ただいまー」
いつもよりドアが軽い気がした。
そしていつものように、おかえり。と、祖母の声も部屋から聞こえた。
「見ておばあちゃん。始めての給料」
繕い物をする祖母に、すぐさま給料を渡す。
祖母は目を見開き、あたしの顔を見た。
「見てもいいのかい?」
「うん、開けて見て」
おばあちゃんは指にツバをつけて慣れた手つきでお札を数える。
それを正座で見つめていた。
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