彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
◆彼を求めて三千厘(さんぜんりん)
私、菅原凛(すがわらりん)の初恋は9歳だった。
当時、我が家は大変険悪なムードで、それに嫌気がさして家出した。
塾に行くふりをして、家から逃げたのは土曜日の午後。
習い事はバスと電車で通っていたので、電子マネーを使って外に出た。
学区外を出て、好き勝手に抜け出した。
途中で水分補給やお弁当を買って、手あたり次第、目に入った電車を乗り継いで逃げた。
夕食の時間には、もうどこにいるのかわからなかった。
目に入った古本屋や大型ショッピングセンターを見て回った。
私の生活は過酷だった。
月火水木金土日!
毎日、何か習い事をしてる。
勉強だったり、勉強だったり、勉強・・・勉強ばっかりだよ!
みんなと遊びたい、好きにテレビを見て、ゲームをしたい。
携帯も、パソコンも、監視されるのは嫌。
9歳ながら、疲れ切っていた。
遊びたいと、習い事をへらしてと言っても、聞いてくれない。
「今苦しい思いをするのと、大人になって苦労するのとどっちが良いの?」
そう考えるところは、両親共に意見があっていた。
絶対変えられない。
変わらない。
(言っても、どうにもならないからと、したがっていたけど・・・。)
それを我慢できなくなった。
どうなってもいいからと、覚悟して逃げた。
逃げたつもりだったけど。
「寒い・・・」
夏が終わり、風が冷たくなり始めた頃だった。
お店が次々と閉まる中、ファミレスに移動したはいいが、店員の視線が痛い。
ヒソヒソとこっちを見て話している。
いくら塾帰りの子供が多くても、10時を過ぎても一人でいるのがおかしいと思ったのかもしれない。
私のしたことで、我が家ではとんでもないことになっているでしょう。
バレたら、・・・・・・
・・・・もうバレてるだろうけど、ただじゃすまない。
< 1 / 1,276 >