彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
そのうちオープンカーは、ある建物の前で止まる。
「ついたぞ。」
車はスムーズに駐車場に入る。
それに合わせて瑞希お兄ちゃんが言う。
「ほら、降りな。」
「え?なにここ・・・?お店?おうち?」
「両方正解。店舗兼住宅だよ。」
そう言って紹介されたのが、綺麗な和洋折衷デザインのバランスが良い家。
「一階は店舗で、2階と3階はアパートで貸してんだ。」
「本当だ・・・すごーい。」
その言葉通り、1階はともかく、2階は洗濯物が干してあって生活感があった。
夜干しね。
「つーても、住んでるのは知ってる顔ばっかだけどな。」
そう言うと瑞希お兄ちゃんは、鍵の束をポケットから出してカギ穴に差し込む。
「うちはうるさいのが多いから、防音も防犯もばっちりなんだ。」
「よく言うぜ。オメーが一番うるさいんだろうが?」
「な、なんだとコラ!?」
言ったのは男前のお兄さん。
吸っていた煙草を、携帯灰皿に入れながら笑う。
「朝から晩までガタガタ、コロコロと・・・ハムスターは夜行性のはずなんだけどなー?」
「誰がハムスターだこの野郎!?」
「ほれほれ、可愛い頬袋を膨らませてんじゃんか?」
「ねぇ−よ!そんなんない!」
「あははは!いいじゃない?瑞希は可愛いから!」
そう言われ、頬をふくらませながら、今度は瑞希お兄さんが相手につっかかるが・・・
「俺は可愛くない!」
「だったら真に受けなさんな〜」
「むう・・・!」
それを綺麗なお兄さんが、笑い飛ばしながら止める。
「はいはい、じゃれるのはもう終わり!お客さんもいるのに騒がない。」
お兄ちゃん2人に注意すると、綺麗なお兄さんはドア開けた。
「おいで。」
来い来いと、私を見ながら笑顔で手招きする。
(そう言われても・・・)
それに緊張して、ちゅうちょしていれば、男前ともめていた瑞希お兄ちゃんが私へと近づく。
「入れよ。」
「はっ、はい!?」
手をつかみ、引っ張ってくれた。
(きゃ~!手をつないでるー!)
これに幸せいっぱいで、お店の中に足を踏み入れた。