彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)




もし道の真ん中に、単車を止め、布が巻かれたポールを担いで、動かない人がいたらどうしますか?



「なんだあれ!?どこの族だ!?」

「つーか、どけよ!」



そう、どけと言いながら向かってくるでしょう。




「どけ―――――――――!!」


(でも、どかない。)




怒鳴りながら、数人が私の方へ突っ込んで来た。

それでも私は動かなかった。




(逃げちゃダメ。)




逃げないと怪我するとわかっていても、踏ん張って動かない。

動いてはいけない。





(これは、ヤンキーの戦いだから、逃げないで構えなきゃ・・・・!)





そう自分に言い聞かせる。

怖いけど、勇気を持って動かない。

すまし顔で、じっとするけど――――――――





フォンフォンフォーン!!


「どけぇ―――――――――!!」


(――――――――やばいやばいやばい!)




本当の気持ちは、いっぱいいっぱい。




(なんでスピード落ちないの!?ぶつかる!?怪我する!?なんで止まらないのよ、馬鹿!)


ぶつかるぶつかる!


(逃げたいけど、逃げちゃダメ、逃げちゃ――――・・・・・!!)




〔★凛は理性と本能のはざまで戦っていた★〕




見た目は、余裕のある態度でいたけど、気持ちはそうでもない。





(きゃー!止まってぇ~~~~~おねがーい!!)





切実に願う。

衝突5秒前。




キッキッキィイイ――――――――――!!




「なんだ、テメーはコラ!?」

「マジ、殺すぞ!?」

「俺らが『だりあ』ってわからねぇーのか!?」


(あ・・・・!?)



止まった。




(止まって、くれた・・・・)




私と敵達に距離は、わずか数センチ。

本当に、ギリギリのところで単車を止めてくれた。





(うわーん、よかった!ぶつけられるかと思った!瑞希お兄ちゃんありがとう!)





ポーカーフェイスを貫きながら、遠い場所にいる瑞希お兄ちゃんにお礼を言った。




〔★これでは瑞希が故人である★〕


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