彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「お前さ。」
「は、はいっ!?」
ふいうちで、瑞希お兄ちゃんが私を呼ぶ。
うわずった声で返事すれば、カウンター越しの相手が苦笑する。
「そんなに緊張するなよ!お前・・・円城寺のツレか?」
「円城寺?」
はて?誰だったかしら?と首を傾げれば、呆れたように言われた。
「おいおい、ニワトリが鳴くにはまだ早いぞ。お前が、自転車で連れてきた奴だろう?」
「あ。」
(彼か。)
瑞希お兄ちゃんの存在が大きいあまり、忘れていた怪我人。
「失礼しました・・・けっきょく彼は、無事なんですか?」
すっかり頭から抜け落ちていた人の安否を聞く。
「ああ・・・さっき、病院運んだ奴からメールして、やっぱ骨折れてたらしいわ。」
「え!?骨折!?」
(だから、先に病院に行った方がいいって言ったのに!)
内心呆れていれば、耳元で笑い声がした。
「ははは!案外、お前が大ジャンプしたから、それで折れちまったのかもな~?」
「ええ!?」
そう声をかけてきたのは、いつの間にか隣に座っていた男前のお兄さん。
火のついていない煙草をくわえながら笑う。
「お前よータイマン会場に、自転車で乗り込むなんざ、笑い話もいいとこだぜー?いいギャグ持ってるよなー?」
「ご、誤解ですよ!あれは仕方なく、自転車で来たんですよ。」
ギャグなんかでしたわけじゃない!
坂をくだる時なんか、命懸けだったんだから!!
(カンナさんがあんな近道を教えるから・・・!)
ホント、メダルを目指して飛んだわけじゃない。
私の言葉に、タバコのお兄さんは不思議そうに言う。
「あんだよ?バイク持ってなかったのか?」
「ないです!」
(バイクはもちろん、免許だってないよ。)
そんな私に、さらに彼は首をかしげる。
「ないなら、パクればいいだろう?どうせ、庄倉のところは、大群連れて円城寺達を襲ってきたんだろう?盗んで天罰食らわせてやっても、罰当たらねぇーぞ?」
「襲ってきたのは否定しませんけど・・・」
この人の言うこと、庄倉関係では間違っていないけど・・・
「どの道、私が何かしなくても、天罰下ってますよ、あんな奴ら・・・」
初めて会った奴らだったが、聞く限り、接する限り、とんでもない卑怯者だった。
そういえば、私が叩いた(?)庄倉はどうなったのだろう?
いや、別に私が心配するほどでもないか。
(神様の代わりに、私が天誅したと思えば、罪にならないよね~)
〔★凛は自分の不祥事を、神様のせいにした★〕