彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
『記憶にない』ということを前提に、かいつまんで説明した。
「6年前・・・家出した私を、バイクに乗せて、おんぶして、家まで送ってくださったじゃないですか?」
「ええ!?6年前!?・・・送る??」
「え!?なに瑞希!?そんなボランティア活動してたの!?」
綺麗なお兄さんの言葉に、ますます首をかしげる瑞希お兄ちゃん。
「6年前・・・うーん・・・・14の頃か・・・」
「俺達が現役で走ってた頃だな。」
瑞希お兄ちゃんの言葉に、眼鏡をかけたお兄さんが言う。
「あの頃は、旗揚げしたばかりで、にぎやかだったからな・・・喧嘩も毎日していたから・・・」
「だから、覚えてないと・・・?」
「君がそんな顔をすることはないぞ。」
私の言葉に眼鏡のお兄さんが言った。
「そこ辺の壁に頭を打てば、お思い出すはずだ。早くしろ、瑞希!」
「ええ!?それはちょっと!!」
「こらこら!俺にそれをやれってんのか!?」
しれっとしながら言うメガネのお兄さんに、額に青筋を浮かべながら言い返す瑞希お兄ちゃん。
私も、このままじゃいけないと思った。
瑞希お兄ちゃんの身が危ないと感じたので言った。
「あ、あの!もういいです!!」
「あ?」
それに耐えきれなくて言った。
「無理に、思い出してもらわなくても・・・いいんです!」
覚えていてくれなかった現実に、耐えられなかったので言った。
「会って、お礼が言いたかっただけなんです!瑞希お兄ちゃんのおかげで、強くなれたって、今を生きてるって・・・」
「お前・・・」
そうよ!
会えただけでも、神様に感謝しなきゃ!
そう自分に言い聞かせて、気持ちを切り替える。