彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
ここまできたら、マイナスな返事しか浮かばない。
そんな私に瑞希お兄ちゃんが言った。
「そんなことねーよ。」
「え!?」
「気分いいぞ。」
ドキッとして顔を上げれば、カップを手にしながら微笑む瑞希お兄ちゃんがいた。
「ありがとうな・・・そこまで、俺のこと覚えててくれたんか。」
「み、瑞希お兄ちゃん・・・!」
「こうやって会えたのも、なんかの縁だろうぜ。よろしくな。」
柔らかく微笑みながら言うと、あいている手で私の頭を撫でてくれた。
「あ・・・!」
どの動作も嬉しくて、そんな好意が幸せで。
目頭が熱くなる。
コツン。
ポツン。
カップがカウンターにつく音と、目からこぼれる涙の音が重なる。
「あ~泣かしたー!」
「ば、馬鹿!あおるな!オメーも、簡単に泣くな!」
「だ、だって・・・ううう・・・!」
「泣くな!強くなったんだろうが!?」
「はっ、はいぃ・・・ぐず・・・!」
目元の涙を手で拭うが追い付かない。
それに呆れながらも、手を伸ばしてきた瑞希お兄ちゃんが拭いてくれる。
私の顔に直接触れてくれてる・・・!!
(あううう・・・幸せ・・・!夢みたい・・・!!)
悪いことの後には、いいことがあるって言うのは本当だったのねー
感涙が止まらない。
「おい、瑞希。ますます泣いてるぞ。」
「拭うふりして、目つぶししてるのか―?」
「するか!泣くなよ、ガキんちょ。」
「ガ、ガキじゃないですぅー・・・瑞希お兄ちゃーん・・・!」
「泣くなよ・・・!」
それで怒られるが、辛くはない。
開いていた穴が埋まるみたいに、気持ちは満たされていた。