彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「行こうぜ、総長!ポリ共も近くなってきたからよ~?」
「そ、そうですね、1号さん!」
瑞希お兄ちゃんの言葉通り、私の耳にもサイレンが届き始める。
救急車ではない110でやってくる国家公務員の音。
「わかってるならいい。」
私の言葉に、真面目な顔で言う瑞希お兄ちゃん。
「族もだが、ポリにだけはパクられんなよ、凛?」
「はい!僕は無免許ですもんね!?」
「そういう意味じゃねぇよ!」
「あ、瑞希お兄ちゃん、今ので口元の布がずれましたよ?」
それを教えながら、思い切って直してあげる。
手を払われないかな?と不安だったけど、彼はされるがままになってくれた。
「たく・・・そういう風に緊張感がないから、心配なんだよ・・・」
「えへへへ・・・・頑張ります。」
「がんばれよ、お前?」
そう言えば、手が伸びてきて頭をなでてくれた。
それが嬉しくて、楽しくて。
「もちろんです!」
バウウン、バッウン!
ハンドルを握り直して答えた。
「飛ばしますので、捕まっててください!」
「頼りにしてるぜ、凛?おう、オメーらも行くぞ!」
私のお願いを受け、瑞希お兄ちゃんがニカッと笑う。
そして、手にしていた旗を振って他の先輩方に合図する。
これに彼らは―――――――・・・・
「おうよ。」
「OK-♪」
「心得た。」
「わはははははははは!」
いつもとは違う、ビシッとした顔で答える。
ヴォンヴォン!!
バルーン、バルバル!
フォン!フォン!
パラリララーパラリラー!!!
返事に続くバイク音。
瑞希お兄ちゃんの声と合わせて後押ししてくれた。
だから私も、ありったけの勇気を持って叫んだ。