彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
体が軽い。
さっきまで、片手に重たいポールを持ってバイクを走らせていた。
それも、刺しゅうがしっかり入った旗。
片腕だけに負担がかかっていて大変だった。
でも、今は平気。
重くない。
「凛大丈夫か?」
「お、おかげさまで!」
後ろからかかる気遣いの声。
そう聞いてくる相手の手には、旗のついたポールが握られていた。
今まで、私が持っていた旗。
「あの!旗・・・・重くないですか、1号さん?」
「あはははは!これぐれーへっちゃらだよ、総長―?」
ちらりと目だけで後ろを見る。
後部座席に乗っているのは、私と同じシルキロールを口元につけ、黒の特攻服を着た人。
さらさらの髪に、きれいな目元。
そしていい香り♪
「凛のSPしようってんだから、もっと俺を頼ってくれていいんだぜ?」
「は、はい!瑞希お兄ちゃん・・・・!」
「コラ、1号だぞ、凛!?」
「えへへへ!ごめんなさーい!」
(いるー!!夢じゃなーい!!)
そう言って笑うのは、私の大好きな瑞希お兄ちゃんだった。
「えらいな、凛は~?これ持って、1人で単車ん転してさー?頑張ったなぁ~よしよし。」
「そ、そんな~!えへへへ・・・・」
後ろから、頭をナデナデしてもらえて舞い上がる。
彼が持ってくれているおかげで、身体が楽だった。
(体というよりも、心だけどねー!!)
「凛こそ、平気か?飛翔連合相手に、体力使っただろう?運転、辛くないか?」
「そ、そんなことないです!瑞・・・1号さん達黒子ファイブが来てくれたから―――・・・・!」
「そっか。」
「そうですよ。」
(そう・・・・瑞希お兄ちゃんを見て、触れて、会話できたことで、私は元気になれたから~!?)
〔★お手軽すぎる回復方法だった★〕
瑞希お兄ちゃんを後ろに乗せたことで、かなり浮かれてしまった。
そんな私に四方から渇(かつ)入れが入る。
「ちょっと凛ちゃーん!1号ちゃんだけじゃなくてモニカちゃんにもかまってよぉ~!」
隣からモニカちゃん。
「モニカじゃなくて、3号だろうー?」
その反対隣から烈司さん。
「どちらにせよ、コードーネームを守れ貴様ら。」
瑞希お兄ちゃんよりも後ろの位置から獅子島さん。
「3号さん、2号さん、4号さん。」
周りを走る黒子ファイブのメンバーだった。
私の一人集会を支えるため、あえて正体を隠して黒子ファイブとして参戦してくれたんだけど・・・・
「あの、5号さんはまだでしょうか・・・?」
「心配するな、凛。次の交差点までには間に合うかな。」
私の問いに瑞希お兄ちゃんが優しく答える。
同時に、少し前のことを思い出した。