彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
百鬼が見えなくなってから瑞希お兄ちゃんは言った。
「凛、この先にある交差点を突っ切るぞ!気を付けろよ!」
「わかりました!でも・・・信号、青だといいですけど・・・」
「そのことだけど・・・」
私のつぶやきに、困ったような顔で瑞希お兄ちゃんは言った。
「お前・・・赤信号のたびに、止まってたんだってな?」
「そうですけど?」
うなずいた瞬間、周りから声が上がった。
「そうですけどって、凛ちゃん!?」
「マジで停止してたのか凛たん!?」
「あほか、凛道。」
「なっ!?なにかいけないことしましたか!?」
赤信号だから止まっただけのこと。
わけがわからず聞けば、後ろから乾いた笑い声がもれる。
「あはははは・・・凛、お前がいい子なのはわかってる。けど、暴走族が赤信号で止まるのはアウトだ。」
「ええ!?それこそアウトじゃないですか!?トラックとか着たらどうするんですかー!?」
「だから、それを足止めするためのあいつの役目だ。」
そう言って、旗を持ってない手を前へと伸ばす瑞希お兄ちゃん。
前方を指差す。
それにつられ、前を見て気づいた。
「わははははははははは!!!」
ババババババババ!!
目で、耳で、空気で、奴の存在を感じた。
「あ、あれはー!?」
交差点のど真ん中に陣取り、コールとエンジンを鳴らしながら笑っている大男。
「百鬼、さん!?」
野獣と呼ばれる喧嘩好き。
奴がいる体を向けている正面、私たちの進行方向にある信号は赤だった。
「あ、あれは・・・」
「あれが新号止めだ。周りを見てみろ、凛。誰も通れなくなってるだろう?」
「そうですね・・・通れなくなってます。」
通れないというよりも。
「わははははははははははは!!」
「うう・・・」
「ひっ!」
(怖くて、動けなくなってる・・・?)
〔★誰も通る気はなさそうだった★〕