彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
心臓がバクバクして、口から出そうな気分。
それを悟られないように、強い子を演じる。
緊張感あふれるピリピリとした空気の中、最初に口を開いたのは・・・
「凛、お前・・・マジか!?」
(瑞希お兄ちゃん・・・)
初恋の人だった。
我に返ったような声。
数歩、私へと近づいてくるのが、床に映る影の移動でわかった。
そして聞かれた。
「本当に・・・俺の跡を継いで、『龍星軍』の頭するのか・・・?」
「はい。」
驚いているけど、嬉しいそうな音程。
その声にドキっとしながら、強く言った。
「最初は・・・なんでキャスティングされてないのに、イレギュラーで参加した俺がっ?て気持ちでしたけど、『瑞希さん』みたいになれるなら、頭を継ぎたいって思えてきて・・・!」
「凛っ!そこまで俺を慕(した)って――――・・・!」
「瑞希のためか。」
私達の会話を邪魔するように、その声が乱入する。
「それは『瑞希のために』総長になると言う意味か、凛道?」
「獅子島さん・・・」
私の言葉を受け、獅子島さんがきつい口調で問いかけてきた。
「口を開けば、瑞希、瑞希だったお前の身の代わりの速さ・・・瑞希の興味を買いたいか?」
その通りだけど、『はい。』とは答えない。
ひるまない。
こんなところで引かない。
「少し意味が違います。」
「なに?」
頭を下げたまま、床を見つめながら言った。
「そのためにも俺は、尊敬する強い男・真田瑞希さんを超えたい。」
「凛?」
「瑞希さんが務めた初代『龍星軍』以上の総長になれば、俺は本当の男になれるでしょう?」
不良漫画に出てきたような言葉を吐く。
それで誰かが、うなった。
でも気にしない。
気にするほど、余裕がない。