彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



心臓がバクバクして、口から出そうな気分。

それを悟られないように、強い子を演じる。

緊張感あふれるピリピリとした空気の中、最初に口を開いたのは・・・








「凛、お前・・・マジか!?」


(瑞希お兄ちゃん・・・)






初恋の人だった。


我に返ったような声。

数歩、私へと近づいてくるのが、床に映る影の移動でわかった。


そして聞かれた。








「本当に・・・俺の跡を継いで、『龍星軍』の頭するのか・・・?」

「はい。」







驚いているけど、嬉しいそうな音程。

その声にドキっとしながら、強く言った。







「最初は・・・なんでキャスティングされてないのに、イレギュラーで参加した俺がっ?て気持ちでしたけど、『瑞希さん』みたいになれるなら、頭を継ぎたいって思えてきて・・・!」

「凛っ!そこまで俺を慕(した)って――――・・・!」


「瑞希のためか。」







私達の会話を邪魔するように、その声が乱入する。






「それは『瑞希のために』総長になると言う意味か、凛道?」

「獅子島さん・・・」






私の言葉を受け、獅子島さんがきつい口調で問いかけてきた。







「口を開けば、瑞希、瑞希だったお前の身の代わりの速さ・・・瑞希の興味を買いたいか?」






その通りだけど、『はい。』とは答えない。




ひるまない。





こんなところで引かない。







「少し意味が違います。」

「なに?」






頭を下げたまま、床を見つめながら言った。









「そのためにも俺は、尊敬する強い男・真田瑞希さんを超えたい。」

「凛?」


「瑞希さんが務めた初代『龍星軍』以上の総長になれば、俺は本当の男になれるでしょう?」







不良漫画に出てきたような言葉を吐く。

それで誰かが、うなった。

でも気にしない。

気にするほど、余裕がない。



< 142 / 1,276 >

この作品をシェア

pagetop