彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
緊張が体を支配する。
ピリピリとした空気の中、私への問いかけは続く。
「へぇ~・・・・瑞希を超えたいのか?」
「烈司!」
言ったのは烈司さん。
小馬鹿にするように笑いながら言う。
「単車も乗れないのに、総長かよ?俺らの顔に泥塗る気か?」
「烈司、いじめんな!」
「これぐれーでいじめなら、オメーの後継者は名乗れねぇーぞ、瑞希。」
「そいつは・・・!」
「どうなんだ、凛道蓮君・・・?」
脅すような声で言われる。
初めて聞く怖い口調。
だけど、耐えた。
「練習します。必ず乗りこなして、あなた方に恥ないようなヤンキーになります。」
「わはははは!だったら、喧嘩の練習も必要じゃねぇか~!?」
陽気な声で笑い飛ばすのは、百鬼。
何を考えてるのかわからない声で言う。
「オメーのようなお上品そうなパンピーが、ヤンキーやれるかねぇ~!?」
「っ!?」
そんな声と一緒に髪を掴まれて、上を向かされた。
(――――――――――――――――野獣!?)
そう錯覚する顔があった。
悲鳴をあげそうになったが、
「凛っ!!」
視界にあの人が映る。
聴覚に彼の声が届く。
同時に、幼い頃抱きしめられた感触がよみがえる。
恐怖を打ち消してくれたぬくもり。
「無駄ですよ。」
愛しい人を見ることなく、乱暴に髪を掴んでいる男に告げる。
「そんなことじゃ、俺の心は折れない。」
脅しか、本気か、わからない行為。
「骨を折られようが、目玉つぶされようが、殺されようが、俺は自分の心を折るつもりはない。」
相手の意図をわからないけど、屈してはいけない。
ここで引けば、今度はコイツに引きはがされる。
瑞希お兄ちゃんとの仲を――――――――!!
(瑞希お兄ちゃんと離れたくない。)
やっと、見つけた大好きな人。
別れたくない。
逃がさない。
(もう離れない・・・!!)
「こんな安いマネ、俺には通じませんよ、百鬼さん?」
余裕を持って笑顔で語りかけた。
「わははははははは!!」
弾けるような笑い声。
次の瞬間、鳥肌が立った。
「!?」
(ヤバい!!)
本能的に、掴まれている手を払って背後へと後退した。
――――――――――――――――ブンっ!!
空気を切る音。
「なっ・・・!?」
「小僧・・・!」
見れば、振り上げた拳を空回りさせた百鬼がいた。