彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
何か罠があるんじゃないかと思う。
どうしていいかわからず、この場で一番大事な人を見る。
「瑞希お兄ちゃん・・・・」
「凛・・・」
名を呼べば、ほっとしたような表情で駆け寄ってきてくれた。
「大丈夫だったか!?ごめんな、うちの馬鹿共のが・・・!」
「こらこら!俺らはオメーの持ち物じゃないぞ、瑞希?」
「というか、皇助と同格扱いするな瑞希。俺、屈辱。」
「ああ!?ケンカ売ってんのか眼鏡ぇー!?」
「やめろ、オメーら!」
今度は違う組み合わせで、喧嘩を始めようとする2人。
そこへ、煙草の臭いを漂わせた人もやってきた。
「無事でよかったな、凛たん?」
「れ、烈司さん!」
「オメーの根性は見せてもらった。これで、『仮採用』が『正式採用』に決定だな?」
反対の肩を叩きながら、ニヒルに笑う。
「え?ど、どういう・・・」
「どういうことかって~?凛ちゃんは、合格したのよ!」
「朝霧さん!?」
「だーかーら!モニカちゃんでしょう~?」
「あ・・・はい、モニカちゃん・・・」
「気をつけてよね~」
私の言葉に、腰に手を当てながら文句を言うオネェさん。
(・・・年上なのに、いいのかな・・・?)
戸惑う私をよそに、モニカちゃんはご機嫌だった。
スキップしながら私の目の前に来ると、にっこり笑って言った。
「悪く思わないでねー皇ちゃんが襲ったのは、みんなが言うように、凛ちゃんの本気を知りたかったからなの。」
「本気?」
「そうよ!本当に『自分の意志』でやる気になったのか・・・見極めたってわけ。」
「そ、それで百鬼さんを、けしかけたんですか!?」
「こらこら、俺様は動物か!?」
意地の悪い顔で私を覗きながら言う野獣。
「おやめ!」
「痛てて!?」
そんな男の耳を引っ張りながら、モニカちゃんはさらに言う。
「ムキにならなくていいでしょうー?通り名が『野獣』のくせに~!」
「あんだオメーは!?やけに凛助の肩持つじゃねぇーか?」
「もしかして、好みなんかー?」
「こ、好み!?」
百鬼の言葉に、烈司さんがニヤニヤしながら言う。
(私、好かれてるの・・・?)
嫌われるよりましだけど、好かれる心当たりがない。
恐る恐るオネェであるモニカちゃんを見る。
彼女は、頬を膨らませながら言った。
「下品ね、アンタ達は~!?あたしは、最初から凛ちゃんが総長になることは賛成だったのよ?贔屓(ひいき)して何が悪いのよ~?ねぇ、みーちゃん?」
どこか色っぽい流し目で、みーちゃんと呼んだ相手を見ていた。
「瑞希お兄ちゃん・・・」
「・・・凛。」
立ち尽くしている瑞希お兄ちゃんの名を呼ぶ。
それに答えるように、彼はまっすぐに私のところまで来てくれた。
「本当に・・・いいのか?『龍星軍』の頭、継げるんか?」
そう尋ねる顔は真剣そのもの。
今まで見ていた『お兄ちゃん』の顔とは違う。
ドラマや漫画で見るような『暴走族の総長』だった。