彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
瑞希お兄ちゃんが出してくれたカプチーノを飲み干す。
とんでもない修羅場のあとは、喉が渇いた。
熱くないカフェインを飲み終わった時、目の前に違うカップを置かれた。
「冷めてただろう?口直ししな。」
「わぁ~ホットココアだ!」
マシュマロが浮かぶ飲み物。
「ありがとう、瑞希お兄ちゃん!」
「ははは!ココア一つで現金だな~」
カウンター越しのキッチンに戻った瑞希お兄ちゃんが笑う。
(笑顔がまぶしすぎる。)
人生初かもしれない、至福のひと時。
『龍星軍』の4代目を継ぐかどうかでもめた後。
話がついて和解(?)出来た私達は、席に腰かけてくつろいでいた。
みんな、瑞希お兄ちゃんが出した飲み物を静かに飲んでいる。
その様子を横目に、お店の時計を見る。
(始発まで、時間はあるな・・・)
ここから駅まで、バスは通ってるのかな?
隠した服に着替えて、お母さんたちにバレる前に帰らなきゃ。
そう思案していたら、不意に視線を感じた。
見れば、瑞希お兄ちゃんをはじめとしたお兄さん方が、真顔で私を見ていた。
「あ、あの~・・・なにか?」
一癖も、二癖もある人達。
まだ何かあるのかと聞けば、瑞希お兄ちゃんが口を開いた。
「凛、どうして『龍星軍』の後継者バトルをしたか、知ってるか?」
「えっ!?それは・・・」
瑞希お兄ちゃんの問いに、カンナさんから聞かされたこと伝えた。
「総長の座を巡ってバトルロイヤルになっていて、決勝を残った円城寺君と庄倉が戦ったんでしょう?円城寺君は、ヤンキー世界を守るために戦ってるって言われて・・・」
「・・・なんだそりゃ?」
「どこの戦隊ものだよ?」
あきれ顔になる瑞希お兄ちゃんに、烈司さんも煙草の煙を吐きながら言った。
「要は、俺らのチームを継ぎたいって円城寺が頼みに来て、いろいろあって渋々開催したイベントだ。」
「しぶしぶ・・・?え!?仕方なくしたんですか?」
思わず周りを見渡せば、みんな『そうだ』と言える顔をしていた。
話を振ってきた瑞希お兄ちゃんでさえも。
「どういうことですか?『総長の座』がご褒美だって、瑞希お兄ちゃんは言ってましたよね・・・!?」
「あのな、凛・・・オメーには、正しい真実を言っておく。」
「正しい真実?」
実際の話を知らない私は、身を乗り出しながら耳を傾ける。
主催者自らの発言ほど、正しいものはない。
そんな私に、瑞希お兄ちゃんは意外な言葉を口にした。