彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
周りのお兄様方(?)の様子に、少しだけ気を引き締めた時。
「凛・・・本当に、無理だけはするなよ。」
「瑞希お兄ちゃん。」
出そうなため息を我慢していたら、耳元で吐息が漏れる。
ふんわりとかおるカカオの香り。
(瑞希お兄ちゃんの匂い!?)
香りに反応して彼を見る。
瑞希お兄ちゃんは、ジッと私を見ていた。
「俺、凛に甘えるかっこうになっちまって、マジでごめんな・・・」
「あう!?」
口からもれる甘いチョコレートの香水・・・じゃなくて、口臭!
切なげに、伏目がちに呟く姿。
まつ毛が長くてきれいだと思う。
「俺もあいつらの時のような失敗はしたくない。だから、凛・・・困ったことがあれば、いつでもすぐに相談しろ。俺にできるのは、オメーの相談役になって、話聞いてやるか、へたくそなコーヒーおごるぐれーだからよ・・・」
「そんな・・・下手くそなんて!!美味しかったです・・・!」
私を見てくださるお顔も美味しいです、と心で思えば言われた。
「マジで、ダメな時は駄目って言えよ!?『龍星軍』は俺が作ったチームだ!いざとなれば、バリスタの方はやめっから!オメーを、凛を優先に―――――」
「やめなくていいです!!」
握り続けている手を、握り直してから言った。
「瑞希お兄ちゃんは、そのままバリスタを続けてください!そして、世界一のバリスタになってください!!」
「凛・・・」
「族の世界は、『龍星軍』は俺に任せて、一般人としての第二の人生を歩んでください!!」
「凛・・・!!」
強気で言えば、瑞希お兄ちゃんの顔が色っぽくなる。
「凛・・・・お前って奴はーーーーー・・・・・!」
間違えた。
瞳を潤ませて、感動的な顔になった瑞希お兄ちゃん。
「すまねぇ、凛・・・!お前に無茶を頼んで・・・!」
「そ・・・・そそそ、そんなことないです!」
「ありがとうな・・・俺、必ず立派なバリスタになる。そしたら、一番に俺のカプチーノ飲んでくれ・・・!」
「はい!頂きます!!」
(むしろ、今のあなた様を頂きたい!!)
きゃ!私のばかばか!
(思考まで男っぽくなって~)
「よしよし、美味しいのを飲ませてやるからな?」
「はぁい!」
ニコニコしながら言う相手に、デレデレしながらうなずく。
我ながら、情けないかもしれないけど。
女子力低いけど、仕方ないじゃん。
(だって、今の私は思春期の男の子なんだから♪)
〔★まさに、物欲まみれのオスだ★〕