彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)


周りのお兄様方(?)の様子に、少しだけ気を引き締めた時。




「凛・・・本当に、無理だけはするなよ。」

「瑞希お兄ちゃん。」





出そうなため息を我慢していたら、耳元で吐息が漏れる。

ふんわりとかおるカカオの香り。




(瑞希お兄ちゃんの匂い!?)




香りに反応して彼を見る。

瑞希お兄ちゃんは、ジッと私を見ていた。





「俺、凛に甘えるかっこうになっちまって、マジでごめんな・・・」


「あう!?」




口からもれる甘いチョコレートの香水・・・じゃなくて、口臭!

切なげに、伏目がちに呟く姿。

まつ毛が長くてきれいだと思う。




「俺もあいつらの時のような失敗はしたくない。だから、凛・・・困ったことがあれば、いつでもすぐに相談しろ。俺にできるのは、オメーの相談役になって、話聞いてやるか、へたくそなコーヒーおごるぐれーだからよ・・・」

「そんな・・・下手くそなんて!!美味しかったです・・・!」



私を見てくださるお顔も美味しいです、と心で思えば言われた。





「マジで、ダメな時は駄目って言えよ!?『龍星軍』は俺が作ったチームだ!いざとなれば、バリスタの方はやめっから!オメーを、凛を優先に―――――」

「やめなくていいです!!」





握り続けている手を、握り直してから言った。




「瑞希お兄ちゃんは、そのままバリスタを続けてください!そして、世界一のバリスタになってください!!」

「凛・・・」

「族の世界は、『龍星軍』は俺に任せて、一般人としての第二の人生を歩んでください!!」

「凛・・・!!」




強気で言えば、瑞希お兄ちゃんの顔が色っぽくなる。






「凛・・・・お前って奴はーーーーー・・・・・!」






間違えた。


瞳を潤ませて、感動的な顔になった瑞希お兄ちゃん。




「すまねぇ、凛・・・!お前に無茶を頼んで・・・!」

「そ・・・・そそそ、そんなことないです!」

「ありがとうな・・・俺、必ず立派なバリスタになる。そしたら、一番に俺のカプチーノ飲んでくれ・・・!」

「はい!頂きます!!」





(むしろ、今のあなた様を頂きたい!!)



きゃ!私のばかばか!



(思考まで男っぽくなって~)





「よしよし、美味しいのを飲ませてやるからな?」

「はぁい!」




ニコニコしながら言う相手に、デレデレしながらうなずく。

我ながら、情けないかもしれないけど。

女子力低いけど、仕方ないじゃん。


(だって、今の私は思春期の男の子なんだから♪)




〔★まさに、物欲まみれのオスだ★〕



< 184 / 1,276 >

この作品をシェア

pagetop