彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
昼下がりの穏やかな午後。
カランカラーン!
客の流れが落ち着いた無人の店内に、人の出入りを知らせるベルの音が響く。
その音に反応し、カウンターキッチンで1人作業をしていたスタッフが手を止める。
店に入って来たお客様に向けて挨拶をした。
「いらっしゃいませー!」
愛想よく、可愛い笑顔で言うイケメン男性スタッフ。
初対面なら、誰もが『可愛い女の子』と間違えてしまうほどキレイな容姿をしている。
そんな極上笑みで出迎えた相手に、お客様達は言った。
「先輩、この間はどうも。」
「なんだ、オメーらだったんか?」
それに、営業スマイルをひっこめながらスタッフは言う。
「円城寺、骨はくっ付いたのか?」
「真田先輩らが、運んでくれたおかげっす。」
そう言って、円城寺大河はギブスした腕を見せる。
これに真田と呼ばれたイケメンスタッフが笑う。
「俺らが言わなきゃ、オメーら医者に行かないだろう?」
「たいした世話焼きっすね。さすが、初代『龍星軍』総長・真田瑞希様。」
「茶化すなよ。」
少年の言葉に、青年は呆れ顔をする。
伝説の暴走族チーム『龍星軍』の後継者を巡り、ヤンキー達の大戦争が起きたのが10日前。
その当事者でもある初代総長の真田瑞希と、後継者候補と言われた円城寺大河。
勝ち抜き戦を終えて以来、今日が初の顔合わせとなっていた。