彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)


昼下がりの穏やかな午後。




カランカラーン!




客の流れが落ち着いた無人の店内に、人の出入りを知らせるベルの音が響く。

その音に反応し、カウンターキッチンで1人作業をしていたスタッフが手を止める。

店に入って来たお客様に向けて挨拶をした。



「いらっしゃいませー!」



愛想よく、可愛い笑顔で言うイケメン男性スタッフ。

初対面なら、誰もが『可愛い女の子』と間違えてしまうほどキレイな容姿をしている。

そんな極上笑みで出迎えた相手に、お客様達は言った。



「先輩、この間はどうも。」

「なんだ、オメーらだったんか?」



それに、営業スマイルをひっこめながらスタッフは言う。



「円城寺、骨はくっ付いたのか?」

「真田先輩らが、運んでくれたおかげっす。」



そう言って、円城寺大河はギブスした腕を見せる。

これに真田と呼ばれたイケメンスタッフが笑う。




「俺らが言わなきゃ、オメーら医者に行かないだろう?」

「たいした世話焼きっすね。さすが、初代『龍星軍』総長・真田瑞希様。」

「茶化すなよ。」




少年の言葉に、青年は呆れ顔をする。



伝説の暴走族チーム『龍星軍』の後継者を巡り、ヤンキー達の大戦争が起きたのが10日前。

その当事者でもある初代総長の真田瑞希と、後継者候補と言われた円城寺大河。

勝ち抜き戦を終えて以来、今日が初の顔合わせとなっていた。



< 192 / 1,276 >

この作品をシェア

pagetop