彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
モダンなギャルソンエプロンをした瑞希に、学ラン姿の円城寺が聞いた。
「今、忙しいっすか?」
「修羅場にでも見えるか?」
円城寺の問いに、ふわっと優しく笑う瑞希。
客商売をしている瑞希を気遣ってか、お客さんがいない時間帯を狙ってやって来たらしい円城寺。
少年の気遣いに気づいていた大人は、彼を見ながら言った。
「骨折甘く見るなよ。10代の骨の怪我は、きちんと治さないと一生引きずるからな。」
「マジで平気っすよ。大げさに固められただけで、全然大したことないっすから。」
「ハハハ!さすが、爆裂弾の頭張ってるだけあるな。高千穂も・・・よかったな、髪の毛。」
ギブスの少年を見た後で、その横にいたセーラー服姿の少女に声をかけた。
「羅漢のバカガキが・・・女の髪まで切りやがって。負けてくれてマジ良かったわ。」
「あははは!ちょっとばかし、敵に花持たせてやっただけっすよ!」
そう言いながら、毛先を指で持ちながら笑う高千穂カンナ。
ザンバラだった彼女の髪は、肩までの長さで整っていた。
「しっかり、羅漢から慰謝料出させましたからね!大河の治療費も!」
「たくましい奴らだな。」
その様子に、安堵したように微笑む瑞希。
口には出さないが、自分を純粋に慕う後輩たちを心配していた。
仲間を通して大丈夫だと聞いていたが、自分の目で見ないと安心できない。
実際に元気な姿を見て、やっと胸をなでおろせた。
安心すると同時に、彼らがただ会いに来ただけではないと、わかっていた。
だから、全員を見ながら聞いた。
「それで?お前らお揃いでどうした?学校も終わってない時間に来やがって・・・俺にカフェインでも、タカリに来たのかー?」
「違います!真面目な話っすよ!」
瑞希の問いに、ニコニコしていたカンナが表情を引き締める。