彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
彼らが席に着いたところで、瑞希はキッチンの中を移動しながら言った。
「凛の件は悪かったな。けど、あんなボロボロのオメーにタイマンさせたくなかったんだよ。」
「きれいごと言わないでくださいよ、瑞希先輩。・・・俺が聞きたいのは、そんなことじゃない。」
「『俺ら』だろう、大河?」
そう言ったのは、吾妻秀一。
「俺らが聞きたいのは、タイマンのやり方でも結果でもないです。」
「ふーん・・・何聞きたい?」
どこか楽しむように聞く瑞希に、秀ではなく、ギブスをはめている少年が言った。
「『凛道蓮』て、何者だよ?」
その言葉で、店内の空気は張り詰める。
視線は瑞希に集まる。
それをものともせずに、元総長は言った。
「・・・何者って聞かれても、オメーの方が一緒にいただろうが?俺より詳しいんじゃねぇか?」
「知らねぇから聞きに来た。」
「なによ?メアド交換してねーの?」
「そんな暇なかったっすよ!」
ポーカーフェイスで話す瑞希と大河のやり取りに、しびれを切らしたのだろう。
イライラした口調でカンナが口を言う。
「あん時は、大河を大嵐山まで運ぶのに必死だったんすから!大河任せた後は、あたしはオトリしてたし・・・!」
そう言って、口を挟んだのはカンナだけではない。
「俺らも、カンナと似たようなもんです。」
「秀!悠斗!」
「獅子島さんの助けで、速攻で大河を医者に連れていきましたから。」
「大河が無傷だったら、話出来たかもしんないすけどね!」
「だよな!大河だよね!?」
「コラコラ!全部俺のせいにしてんじゃねーぞ!?」
自分を見ながら文句を言う仲間。
それを注意してから、大河は瑞希に言った。
「とにかく!こうなりゃ、瑞希先輩に聞くしかないと思ったんすよ!お持ち帰りをしてましたからねっ!」
「・・・連れては帰ったが、オメーずいぶん甘えたこと抜かすな?」
「はあ!?どう甘えてるって言うんすか!?」
「会いたいなら、テメーらで探せば良いだろう?」
そう言いながら、コーヒー豆の入った袋を開ける瑞希。
「わかんねぇことを聞くのは悪くないが、まずは、自力で何とかしようぜ。」
そっけなく言うと、開けた袋の中身を、コーヒーマシーンに流し込む。
それをしかめっ面で見つめる大河。
「俺らがなにもせずに、ここに来たと思ってんすか・・・!?」
返事代わりに、ガガガガーとコーヒー豆の砕ける音が響く。