彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「俺が凛を連れまわしたのは、俺が凛を気に入ったからだ。凛自身が好きだったから、夜遊びの道連れにしただけだ。くそまじめに考えるなよ?」
「・・・お兄ちゃん・・・」
「そういう顔されると、ますます手を出したくなるだろうーが?」
タイミングよく、正面の信号が赤になる。
停止するや否や、振り返って、私へと手を伸ばす瑞希お兄ちゃん。
「あ・・・」
「男なら、ピシッとしろ、ばーか。」
優しい口調で、甘い喋りで、私の頭を撫でる愛しい人。
ヘルメット越しなのに、彼のぬくもりが伝わるようで嬉しい。
「瑞希お兄ちゃん・・・!」
それで甘えたくなり、思わず抱き付く。
「こら。なにしてんだ、おめーは?」
「えへへへ!瑞希お兄ちゃん、召し捕ったり~♪」
「あははは!ばーか。」
抱き付いても、怒られなかった。
じゃあ、このままくっついておこう。
瑞希お兄ちゃんは、触り心地が気持ち良くて、良い匂いがするから大好き。
どこのボディシャンプー使ってるか聞いてみよー♪
「・・・・。」
「・・・瑞希お兄ちゃん?」
ふいに。
ただならぬ気配がした。
思わず、顔を上げで瑞希お兄ちゃんを見る。
「どうしたの?」
そう言いたくなるような、目をしていた。
半目になった瞳が、私の背後を睨んでいる。
(後ろに何かある?)
暗がりの中を振り向くが、私たち以外のバイクの姿はない。
あとは車ばかりだけど、ニラみつけたくなるような変な車はない。
「瑞希お兄ちゃん・・・どうしたの?」
もう一度聞けば、彼の視線が私に移る。
「なんでもねぇーよ。」
そう言って、まぶしいぐらいの笑顔を見せる瑞希お兄ちゃん。
(嘘だ・・・)
誤魔化してるとわかったけど、これ以上は言えない。
彼は、言うつもりがない。
聞いても教えてくれない気がした。
教えない理由とか、わからないけど、言ってくれないとわかった。
察することはできたけど・・・
(悔しい・・・・)
本音をさらしてもらえないことが、すごく悲しい。