彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
こんなにも、瑞希お兄ちゃんが好きなのに。
愛してるのに、大事に思ってるのに・・・
(彼にそれが伝わってない・・・?)
不安になったから言った。
「『俺』がいますから。」
「凛?」
「俺が、瑞希お兄ちゃんの側にいます。家族になろうなんて、図々しいことは(まだ)言いません!だけど・・・少しでも、俺という人間に、瑞希お兄ちゃんと共通する部分があるのならーーーー!」
嫌なストレスがあると言うなら。
「俺に吐き出してください。」
「凛!?」
「俺は瑞希お兄ちゃんに話したことで、楽になれました。人という字は、一人で立っているからできたっていう奴がいますが、俺はそうとは思わない。2人の人間が支え合って、成り立っているのが『人』という文字だと思ってます。だから・・・だから・・・」
「凛・・・・」
そこまで言って、私は何も言えなくなった。
何を言いたかったのか、上手く伝えられたかわからない。
ただ一言、伝わればよかった。
「みんなが、瑞希お兄ちゃんを大事にしてるように、俺も瑞希お兄ちゃんを大事にしていきたいんです!」
ちゃんと伝わるように、目を見て告げる。
私の瞳に映る瑞希お兄ちゃんは、呆然としていて反応が薄い。
互いに、何も言わぬままその場にとどまる私達。
信号が青に変わったことで、他の車は動き始める。
私達をよけて、直進して進む車の集団。
「大事・・・ね。」
排気ガスがただよう中、ぽつりと瑞希お兄ちゃんが言った。
「それを言うなら、お互いに大事にしていくってのが正しい答えだぞ、凛?」
シミジミした口調で言うと、私の頭に置いていた手を退ける。
「あ。」
「ガキのくせに、生意気ばっか言いやがって。」
首筋に手を当てると、すべり込ませるように私のマスクの下に指を入れてきた。