彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「生意気言う口はこれか?」
「うひゃ!?」
私の唇をなぞるあたたかい手。
耳が熱くなり、頭がくらくらする。
「あははは!そういう反応するから、モニカに遊ばれんだよ?」
私の反応を楽しんでから、彼は笑う。
「せいぜい、頑張って俺を大事にしてくれよー凛?」
私の唇から指を離し、マスクの中から手を引き抜く瑞希お兄ちゃん。
その手はハンドルを握り、止まっていたバイクを発進させた。
「はっ!?」
それでやっと、私は正気に戻る。
同時に、返事をした。
「し、します!瑞希お兄ちゃんを大事にしますっ!!」
背中へと抱き付きながら、宣言する。
「俺絶対、瑞希お兄ちゃんに嫌な思いさせない!大事にしまーす!」
「わーった、わーった!いいから、もう黙れ!大声出して、恥ずかしい奴ー・・・」
「だって本当だもん!」
「わ、わかったっての!」
子供みたいな喧嘩をしながら、私達を乗せたバイクが山道を進む。
瑞希お兄ちゃんの背にくっつきながら思う。
(絶対に、瑞希お兄ちゃんを大事にする!亡き親御さんの分まで、私が瑞希お兄ちゃんを大事にするんだからー!!)
「ほら、気持ち切り替えろ、凛!もうすぐ練習場につくぞ!」
「はい!」
「今日も気合入れていくぞ!?」
「はい!」
「がんばるぞ!」
「頑張ります!!」
こうして、新たな事実を得た私は決意する。
早くヤンキーに、いいえ、総長に。
『龍星軍』の総長に相応しい『漢』になるためにも、バイクの運転を制覇する!
「「やるぞー!!」」
声をそろえて、私達は意気込む・・・・・が。
ボバァーーーーン!!
「「うあああああああああああああああ!!?」」
「また飛んでるっーーー!?」
遅れて練習場にやって来た烈司が見たのは、またしても単車でダイブする凛と瑞希の姿。
人間、意気込みだけじゃ、どうにもならないというお話。
~ノンストップ!恋も非行も、前途多難!?~完~