彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)


「ごめん・・・習い事があるから、入れないんだ。」

「そうなの?」

「うん。」



事実、週一回は、格闘技・・・護身術の稽古に行っている。

最近は、2週間に一回ぐらいでも大丈夫と言われている。

そこは伏せて、習い事と称して言った。



「お稽古あるから・・・できそうにないの。」

「そっかーじゃあ無理だね。」

「残念だけど、頑張ってね。」

「うん。ありがとう。」



そう言った時。









バリバリバリ!!ブロロロ―ン!!


「きゃはははははは!!」






爆音と一緒に、女の甲高い声が通過した。






「きゃ!?すごい音!」

「・・・・なにあれ?」





一瞬目に移った2人乗りのバイク。

後ろに座っていた派手な女は、私と変わらない年頃だった。





「やだ、菅原さん知らないの?」

「え?」




一緒にいた、前髪のそろった友達が言った。




「あの人、うちのクラスの渕上さんよ?」

「渕上さん・・・?え?あの渕上さん?」

「そうだよ!有名な女総長で美ギャルだよ・・・!」




声を小さくしながら彼女達は言う。




「渕上月乃亜(ふちがみるのあ)さんって言えば、うちで逆らっちゃいけない女番長じゃない?」

「そうだよねー先輩返り討ちにして、仕切ってるんだもんね。美人だけど、すっごく強いヤンキーなんだもんね。」

「あれでしょう?最近復活するらしい、『龍星軍』の総長とも知り合いないんだって。」

「へぇー・・・初耳だね。」





友達の言葉に、ヒクッと顔が引きつる。





(私は、あんな子知らないよ。)





彼女達には言えない真実。





(『龍星軍』の総長である私が知らないんだから・・・またデマね。)





心の奥底で、こっそりとため息をついた。


< 334 / 1,276 >

この作品をシェア

pagetop