彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「ごめん・・・習い事があるから、入れないんだ。」
「そうなの?」
「うん。」
事実、週一回は、格闘技・・・護身術の稽古に行っている。
最近は、2週間に一回ぐらいでも大丈夫と言われている。
そこは伏せて、習い事と称して言った。
「お稽古あるから・・・できそうにないの。」
「そっかーじゃあ無理だね。」
「残念だけど、頑張ってね。」
「うん。ありがとう。」
そう言った時。
バリバリバリ!!ブロロロ―ン!!
「きゃはははははは!!」
爆音と一緒に、女の甲高い声が通過した。
「きゃ!?すごい音!」
「・・・・なにあれ?」
一瞬目に移った2人乗りのバイク。
後ろに座っていた派手な女は、私と変わらない年頃だった。
「やだ、菅原さん知らないの?」
「え?」
一緒にいた、前髪のそろった友達が言った。
「あの人、うちのクラスの渕上さんよ?」
「渕上さん・・・?え?あの渕上さん?」
「そうだよ!有名な女総長で美ギャルだよ・・・!」
声を小さくしながら彼女達は言う。
「渕上月乃亜(ふちがみるのあ)さんって言えば、うちで逆らっちゃいけない女番長じゃない?」
「そうだよねー先輩返り討ちにして、仕切ってるんだもんね。美人だけど、すっごく強いヤンキーなんだもんね。」
「あれでしょう?最近復活するらしい、『龍星軍』の総長とも知り合いないんだって。」
「へぇー・・・初耳だね。」
友達の言葉に、ヒクッと顔が引きつる。
(私は、あんな子知らないよ。)
彼女達には言えない真実。
(『龍星軍』の総長である私が知らないんだから・・・またデマね。)
心の奥底で、こっそりとため息をついた。