彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
後ろに人が乗ったのを、ミラー越しで確認する。
キーを回して、エンジンをかけて、ハンドルを動かして、足を地面から離す。
ブロロロ!ブロロッロ!
(それ!)
動き出したバイクを、クラッチ操作で前へと進める。
土の地面を、さっそうと走る。
自転車を運転している時と同じ。
違和感なく動かせた。
「おおー!」
「良い感じ、良い感じ!」
「ほぼ、完成だな・・・」
「わははは!やるじゃねぇか!!」
様子を見ていた先輩方から声が上がる。
金曜の夜、私は瑞希お兄ちゃん達と一緒にバイクの練習場(元ゴルフ場)にきていた。
いつもは、誰かいないけど今日はみんないる。
瑞希お兄ちゃんも、烈司さんも、モニカちゃんも、百鬼も、獅子島さんも。
みんな、明日が休みらしいので、久々の全員集合となっていた。
「凛道、練習の成果を見せてもらおうか。」
「うっ・・・は、はい、獅子島さん・・・!」
元副総長らしく(?)威圧的に言う姿が、未だに苦手。
例のごとく、木製の用せん挟(ようせんばさみ)とシャーペンを手にチェックする気満々の眼鏡の先輩。
彼は目だけで、私をじろじろ見ながら言った。
「俺達が時間を割いて目をかけたんだ。無駄に過ごしたとは言わせんぞ?」
「あう・・・それは~」
「ああん!?なんだ、その言いぐさは!?」
獅子島さんの言葉に、問われている私ではなく・・・・
「凛が真面目にしてねぇって言ってんのか!?」
「瑞希お兄ちゃん!?」
私を可愛がってくれている大好きな人が反論した。
彼の言葉に獅子島さんは、眉間部分にある眼鏡の金具をクイッと持ちあげながら言う。
「頑張っても結果がすべてだ。大人社会に備え、今からそうしつけておいた方がいい。」
「オメーの場合、初めて会った奴からすれば、しつけかいじめかわからねぇーんだよ!もう少し優しさ見せろ!」
「不要だ。つけあがる。」
「凛はそんな子じゃねぇ!」
「なおさら、不要だ。」
「伊織!」
「おいおい、やめねぇーか!」
言い争う2人を見かね、烈司さんが間に入る。