彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「どれだけ僕が、良い思いをしたか、あなたに伝えるためにも、絶対後ろに乗せるようになりたい!それなのに・・・空回りばっかりだったから――――合わせる顔がなくて、それで僕は・・・」
「・・・・それで一人で練習に行ったのか?」
「・・・はい。」
「2乗りの練習なのに、1人でか?」
「う!?・・・あううう・・・すみません。」
私の矛盾をつくと、ため息交じりに瑞希お兄ちゃんは言った。
「ばか。」
怖くない声で紡がれた言葉。
「凛が心配しなくても、俺は十分楽しんでる。」
「え?」
「凛といて、楽しいって言ってんだよ!」
ニカッと笑って、ギュッと抱きしめられる。
(・・・あれ?これって・・・)
嫌われてない?
“だから、凛は駄目なのよ!”
“言うことを聞きなさい、凛。”
お母さんたちとは違う反応。
(私は・・・・否定されなかった・・・・?)
「ばかだな~凛。こんなに可愛がってんのによー」
ニヤニヤしながら、頭をナデナデされる。
(ひゃあああああああああああ!!)
それで、一気に頭の中が飛んだ。
「か、かかかか、可愛いって!僕、僕は!」
「あははは!怒るな怒るな!凛はカッコいいもんなぁ~よしよし。」
言葉と反する猫かわいがりよう。
それを見ていた周囲もあきれる。
「なんだよあれ~!?なんなんすか!?」
「きぃー!悔しい!みーちゃんばっかり、凛ちゃんを可愛がって!」
「そんなことは今さらだろう。」
呆れているけど、悪くない。
いい意味で、私を見つめていた。
「凛ちゃんも、みーちゃんも仕方ないんだからー!!」
私達を見ていた。
そんな彼らに、瑞希お兄ちゃん小声で私に言う。
「よく言うぜ、あいつら!心配してたのは俺だけじゃないんだぜ、凛?」
「え?そうなんですか?」
「当たり前だろう?オメーは、俺らにお気に入り登録されてる可愛い後輩だ。」
「か、かかかか可愛い!?」
「怒るなって、凛!・・・大事な存在には、変わりないからよ。」
(大事な存在・・・・)
そう言って笑いかけてくれる笑顔が、あの日と重なる。