彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
それを見て。

頭に浮かんだ思い出によって、無意識のうちに聞いていた。




「・・・ならない?」

「あ?なんだ、凛?」

「もう・・・・・・・勝手にいなくならないよね?」





目が覚めた時、目を赤くした母と、クマを作った父に抱きしめられた。

そこに、瑞希お兄ちゃんの姿はなく、すごく落胆した。

だからーーーー






「俺がしっかりすれば、もう瑞希お兄ちゃんはいなくならないよね・・・?」






かすれる声で、彼だけに伝える。

その質問に、一瞬目を丸くすると、私の頭を撫でながら耳元でささやく。





「凛は、あの時よりも大きくなった。俺がどこかに行こうとも、お前が追っかけてきてくれるだろう?」

「え?」

「現にお前、俺を見つけ出せたじゃんか?」






意地悪く笑ってから告げられる。





「凛が俺を嫌いにならない限り、俺は凛と一緒だよ。」

「瑞希お兄ちゃん・・・!」

「もう、どこにも行かねぇよ。」





一言。

たった一言だったけど。







「・・・絶対だよ・・・・?」





離れないと、約束してくれたことが嬉しい。

それで、胸が熱くなる。

目元も熱くなった。





「あ!?コラ、なに泣いてんだよ、凛!?四代目が、簡単に涙みせるな!」

「あ!?なにしてんのよ、みーちゃん!!凛ちゃんに何言って泣かせたのー!?今、コソコソ話してたでしょう!?」

「え?モニカ先輩、地獄耳すぎます!」





騒ぐ外野の声が、ラジオの音のように感じる。

流れるメロディーを聞きながら、瑞希お兄ちゃんの胸に顔を埋める。

何年もかけて探して、やっと出会えた大好きなお兄ちゃん。

ちょっとだけ・・・もうちょっとだけ近くで触りたい。

甘えが強いすがる気持ち。





(触れていたい。)





遠慮しながらも、少しだけすり寄る。

恐る恐る、目だけで相手を見る。

私のしたことへの反応をうかがう。



ぼんやりと見つめていれば、目元を指で拭われた。






「約束する。ぜってぇーどこにも行かねぇから、もう泣くんじゃないぞ?」






あの時のように、私を安心させる笑顔。

やっと、安心できた。





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