彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「まったく・・・威嚇(いかく)する姿が、ポチに似てるな?」
「誰がポチですか!?てか、あなたハムスターに威嚇されてたんですか!?」
「昔のことだ。さて、お前にはいくつか質問に答えてもらおう。」
「あぅ!?」
そう言うなり、アゴを掴んで上を向かされた。
「伊織テメー!?凛を離せ!」
「キレるな。触ってるだけだろう?」
「い、痛い痛い!」
ギューと私の顎を掴みながら彼は言った。
「凛道、瑞希からバイト代をもらってなかったな?」
「え!?」
「バイクのコーチ代として、無償で働いてるとは言え・・・・瑞希の性格を思えば、少々腑(ふ)に落ちん。」
「俺のどこに納得できないんだ伊織!?」
歯をむき出しにしながら怒鳴ると、獅子島さんの胸ぐらを掴む瑞希お兄ちゃん。
「だから、キレるなと言ってるだろう。」
それに冷静な口調で呆れながら言った。
「お前は隠してるつもりだが、凛道は携帯を持ってないそうだな?」
「う!?それは~!」
「だから、お前から連絡をしない。こちらから連絡できない。」
「え!?そうなの、凛ちゃん!?」
「コラコラ!聞いてねぇぞ、瑞希!?」
「うるせぇ!凛は俺が面倒見るんだ!口出しするな!」
「しかし、あまりにも凛道は不自由すぎる。その行動が規制され過ぎている。なぁ、凛道?」
「し、獅子島さん・・・!」
(この人、気づいてる・・・!?)
そうとしか思えない言動。
「そこで俺は1つの仮説を立てた。」
ドクン。
(やめて。)
「凛道はもしかすると・・・・」
ドクン、ドクン。
(やめて・・・!)
「凛道が、自分にかかわる情報を伏せるのは―――――――」
―――――――――言わないで!!
全部バレる!
ばらされる!!
その想いで強く目をつぶれば、告げられた。
「生活保護受給者の家庭じゃないか?」
「・・・・・・・・・はい?」
生活保護?
「「「「生活保護ぉ!?」」」」
絶句する瑞希お兄ちゃん達と、ポカーンとする私。
言われた言葉は、予想していたものと違った。