彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「これで一件落着だな!」
私の返事を受け、満足そうに瑞希お兄ちゃんが言う。
「バイクは、俺の家のガレージに置けばいい。早速試乗しようぜ、凛!」
機嫌良く言うと、私の腕を引っ張る瑞希お兄ちゃん。
「なぁ、帰りは後ろに乗っけてくれよ凛!俺が凛の初バイクに、一番乗りな~?」
「は、はい!おおせのままに!」
瑞希お兄ちゃんのご指名に、首を縦に振りながら答えたら悲鳴があがる。
「ちょっとー!?また、凛ちゃん独り占めする気、みーちゃん?凛ちゃんの後ろに乗るのはあたしよ~」
「オメー単車で来たんだろう、モニカ?自分のに乗れよ!」
「みーちゃんだって、自分の単車で来たでしょう!?あんたのインパルスを置き去りにする気!?」
「俺はいいよ!烈司が乗って帰るから!」
「おい、勝手に決めるなよ。」
「諦めろ、烈司。瑞希の子守りはお前の仕事だ。」
「わははははは!いつまでも、親離れできないなぁ~!?」
「誰が子供だ!?俺は、烈司の子供じゃない!」
「俺だって、こんなデカいガキ、まだ作ってねぇよ。」
百鬼の言葉に、瑞希お兄ちゃんと烈司さんが反発すれば笑いが起きる。
「ぷっ・・・クスクス。」
「あー!?なに笑ってんだよ、凛!?」
思わず、堪えていた笑いが漏れる。
それに気づいた瑞希お兄ちゃんが、私の肩に腕を回しながら言う。
「この野郎~なぁーに、笑ってんだよ?」
「わ、わっ!?ごめんなさい!」
「だぁーめ!許さいぞ~こいつめ~!」
「ひゃ!?あははは!いたい、くすぐったいよ!」
頬や頭をゆるい力で、グリグリされてくすぐったい。
声を出して笑えば、それを見ていた先輩達も笑う。
「やぁーね~2人共、子供なんだから~」
「いっそ、弟にしてしまえ、瑞希。」
「わはははは!俺らでいいだろう、俺らで!!」
「デビューが待ち遠しいな、瑞希?」
「おうよ!つーか、俺じゃなくて凛に言えよ!なぁ~凛?」
「えへへ・・・すっごく楽しみです!」
瑞希お兄ちゃんの問いに、笑って答える。
一瞬、どうなるかと思ったけど、危機は乗り越えた。
乗り越えたけど・・・ふいに思ってしまう。