彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
私達の姿勢に、尾村の仲間が過剰に反応する。
「クソガキ共!やぶれかぶれだ、ちくしょう!」
「組長が来る前に殺してやる!」
「俺らのメンツつぶしやがって!」
完全な逆切れ状態で襲い掛かってきた。
(なにが、メンツよ。)
群れなきゃ何にもできないくせに。
「――――――それぐらいでつぶれる弱い面子なら、燃えるゴミの日にしててしまいなさい!!」
ズガッ!ゴゴン!!
両手に持ったトンファーを、容赦(ようしゃ)なくふる。
「げあ!」
「ぐお!?」
「いてぇぇぇ!」
近づく相手を、手あたり次第叩きのめす。
「まったく!とことん悪魔だな、テメーは!?」
背中合わせ、背後にいる円城寺君が、ゴキッという音を立てながら私に言う。
首だけで振り返れば、腕を抑え込んでうずくまるヤンキーが円城寺君の足元に見えた。
(あれ・・・腕を折ったんじゃないの・・・!?)
「爆裂弾の『悪鬼』には、言われたくありません!」
バコン!
顔を円城寺君に向けたまま、利き手で近寄ってきたヤンキーの顔面を叩いて鎮める。
「ケッ!ちげーねぇー・・・・ゆっくり話もできねぇな!」
「まったくですね?」
背中合わせに、顔の見えない相手と話す。
2、3人、殴り倒したところで、遠巻きに敵が私達から離れた。
「大河!早く来い!」
そこで、再び声が上がる。
見れば、カンナさんが、教室前方の黒板があるドアの側にいた。
他の二人も側にいる。
「先公共は、後ろからきてる!こっちから逃げるぞっ!」
「おう!行くぞ、凛道!」
「え!?う、うん・・・!」
(一緒に逃げようと、誘ってくれた!?)
まさか、そう言ってくれるとは思わなかったので、かなりびっくりした。
それでも、先に走り出した円城寺君に続く形で、逃げようとしたんだけど―――――――
「待てや!」
「え!?」
私と円城寺君の間にできわずかな距離に、誰かが割り込んで来た。
「行かせねぇぞ!『龍星軍』4代目総長、凛道蓮!!」
「君は・・・!?」
そう言って、私の行く手を遮ったのは、可児良信だった。