彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
可児が先に仕掛ける形で始まったタイマン。
手こずりそうな予感がした。
「うらぁ!」
「っ!」
(速い!拳も重そう・・・当たれば、ヤバい!)
思った通りの動きの良さに、自然と眉間にしわが寄る。
(まぁ、男子の拳なんて、当たるとみんな痛いんだけどね・・・)
「オラ!オラ!オラ!逃げてばっかじゃ、戦いになんねぇぞ!?」
可児の罵声を聞きつつ、向けられる拳をかわしながら考えた。
(よくわからないけど、ヤンキーのケンカって、勝てばいいのよね・・・?)
とはいえ、この人相手に、急所を蹴ったり、目つぶしはしたくないな。
周りで人も見てるし、昼間だし。
〔★さっきは平気でしていた★〕
(ひとまず、私も攻撃してみよう。)
よけてばかりではいけない。
目だけで教室中を見る。
ごちゃごちゃになった机と、負傷したヤンキーの山。
それを見て気づく。
(ああ、そうだ・・・。)
思いついた作戦。
「ほら!かかってこいよ!」
そう言いながら、攻撃を続ける可児から一歩後ろに下がる。
「逃げるな!」
私の動きに合わせて、可児が一歩進む。
再び、後ろに一歩進めば、やはり追いかけてきた。
横にずれても、必ず追ってくる。
(・・・うん。これでいこう。)
肝心なのは位置。
それが勝つ糸口。
あくまで作戦だから、バレないようにするため、軽くステップを踏む。
タタタタン!タタタン!
「凛!?」
「なんだテメー!?遊んでんのか!?」
「真面目にやりやがれ、チビすけ!」
私の足の動きを見ても、カンナさん達も外野も変な顔をするだけで気づかない。
タタタタン!タタタン!
「テメー何を企んでる!?」
さすがに、対戦相手は何かると思い始める。
でも、その間に、私は良い位置に来れた。
それがバレないように、利き手を握った。
「――――――――お前を殴る方法だっ!」
誤魔化しを込めた、私からの初パンチ。
「はっ!」
我ながら、良い角度と速さで可児のみぞおちに向かったんだけど・・・
「お?」
バシッ!
「え?」
可児へ入れたパンチは彼にあたった。
当たったけど・・・
「へぇ~?思ったよりも、小さい手をしてるな~?」
「・・・うそー・・・。」
向けた拳を防がれ、握られてしまった。