彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



可児が先に仕掛ける形で始まったタイマン。

手こずりそうな予感がした。





「うらぁ!」

「っ!」


(速い!拳も重そう・・・当たれば、ヤバい!)




思った通りの動きの良さに、自然と眉間にしわが寄る。




(まぁ、男子の拳なんて、当たるとみんな痛いんだけどね・・・)



「オラ!オラ!オラ!逃げてばっかじゃ、戦いになんねぇぞ!?」





可児の罵声を聞きつつ、向けられる拳をかわしながら考えた。





(よくわからないけど、ヤンキーのケンカって、勝てばいいのよね・・・?)





とはいえ、この人相手に、急所を蹴ったり、目つぶしはしたくないな。

周りで人も見てるし、昼間だし。



〔★さっきは平気でしていた★〕





(ひとまず、私も攻撃してみよう。)



よけてばかりではいけない。

目だけで教室中を見る。

ごちゃごちゃになった机と、負傷したヤンキーの山。

それを見て気づく。




(ああ、そうだ・・・。)




思いついた作戦。





「ほら!かかってこいよ!」



そう言いながら、攻撃を続ける可児から一歩後ろに下がる。




「逃げるな!」




私の動きに合わせて、可児が一歩進む。

再び、後ろに一歩進めば、やはり追いかけてきた。

横にずれても、必ず追ってくる。





(・・・うん。これでいこう。)





肝心なのは位置。

それが勝つ糸口。

あくまで作戦だから、バレないようにするため、軽くステップを踏む。




タタタタン!タタタン!



「凛!?」

「なんだテメー!?遊んでんのか!?」

「真面目にやりやがれ、チビすけ!」





私の足の動きを見ても、カンナさん達も外野も変な顔をするだけで気づかない。





タタタタン!タタタン!


「テメー何を企んでる!?」




さすがに、対戦相手は何かると思い始める。

でも、その間に、私は良い位置に来れた。

それがバレないように、利き手を握った。






「――――――――お前を殴る方法だっ!」






誤魔化しを込めた、私からの初パンチ。



「はっ!」



我ながら、良い角度と速さで可児のみぞおちに向かったんだけど・・・




「お?」


バシッ!


「え?」




可児へ入れたパンチは彼にあたった。

当たったけど・・・





「へぇ~?思ったよりも、小さい手をしてるな~?」


「・・・うそー・・・。」





向けた拳を防がれ、握られてしまった。


< 643 / 1,276 >

この作品をシェア

pagetop