彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
ねばる相手に呆れたのは私だけじゃなかった。
「か、可児・・・そこまでするか!」
「スゲー根性!」
「つーか、やりすぎじゃねぇ?」
「むしろ、ダサくない?」
「ねぇ~必死過ぎてカッコ悪いよね~」
「凛道君が言うように、きもーい。」
しつこい可児に、周りはだんだんと冷めていく。
同情というより、悪あがきを見るような目。
(なによ、それ・・・?味方までそんな顔して・・・薄情ね。)
そう思いながら、可児の顔を押していたら聞えた。
「へへへ・・・噂通りすご腕だな・・・!?おりゃ、嬉しいぜ・・・!」
「いや、僕は嬉しくないんですけど?」
「どいつも、こいつも、カッコばっかの野郎でよぉ・・・!オメーは、俺の思った通り・・・」
「は?」
「戦いがいのある、道理の通った硬派だぜ・・・・!」
道理。
その単語が心に引っかかる。
それを振りはらうように、蹴り飛ばした。
「ぐはっ!?」
私の足はお腹に入り、可児は床に転がった。
そこへ足早に近づき、利き足を上げる。
かかとを、可児へと向けたのだけれど――――・・・・
“バトルロワイヤルとは言え、サシで勝負しろ!”
“いい加減にしろ!いくら仲間でも、見過ごせないぞ!?”
“女に手を出すなってのは、うちのルールだろう!?”
逆流する記憶。
「・・・ぐう・・・・!」
よけきれないと判断したのか、覚悟を決めて固まる可児。
(瑞希お兄ちゃんを悪く言った奴の仲間だけど―――――)
五分刈りへと振り上げていた足を、静かにおろす。
「な・・・に・・・?」
スっと、可児にあてることなく、私のもう片方の足のある場所へ戻した。