彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)



(え?何?何が起きてるの―――・・・!?)




振り返れば、尾村の仲間が逃げていた。

ふと、その中に尾村がいないことに気づく。

いつから、尾村がいなかったのかわからない。

ただ、怪我をした仲間を、尾村の仲間達は見捨てていた。

そして、『奴』も―――――




「行こうぜ、羽柴!」

「ああ、いつまでいれるかよ!」

「可児はどうする?」

「捨てて行くしかないだろう!?面倒見れるか・・・!」


(なにそれ!?)





私と戦った可児も、切り捨てられる側になっていた。

捨てて行くと言った羽柴に、カッと体が熱くなる。

その言葉通り、友達と言ったはずの可児を見捨てて逃げていった。




「くっ・・・!」




仲間が立ち去る中、顔を抑えて可児がうなる。

私が怪我をさせた坊主頭は、苦い顔でまだうずくまっている。

その痛々しい様子に、立ち止まりそうになる。





(どうしよう・・・助けた方が―――――)


「無理だぞ。」

「え!?」




そんな声と一緒に、つながれてない方の腕を引かれた。




「円城寺君!?」

「俺らの業界は、弱肉強食だ。頭がかけた集団はもろい・・・」




そう言って、目だけで可児を見る爆裂弾の頭。




「オメーはこれ以上、あいつに情けをかけちゃいけねぇ。それこそ、『硬派』を語る奴への侮辱になるんだぞ?」

「で、でも、あんなボロボロのままっで置き去りは―――」

「ばか!ボロボロにしたのはオメーだろう!?」

「痛い!?」




私の言葉に、反対の手をつないでいた少女が怒鳴る。

同時に、げん骨で軽く頭を叩かれた。




「心配しなくても、あれぐれーで先公に御用になる奴じゃねぇ!他人より、自分の心配しろ、凛!」

「でも、カンナさん・・・!」

「オメーが捕まれば、瑞希お兄ちゃんが悲しむだろうが!?」


・・・瑞希お兄ちゃんが悲しむ。


「それでも、凛はいい・・・」

「いいわけないでしょう?さあ、バッくれますよ!!」

グイ、グイ!


「おわ!?」

「きゃあ!?」





私を引っ張ろうとしていた2人を、今度は私がひっぱる。




「瑞希お兄ちゃんへのご迷惑は、万死(ばんし)に値(あたい)する!!さっさと逃げますよ!ぐずぐずしないでください!」




〔★凛は覚醒(かくせい)した★〕
〔★カンナと大河との立場が逆転した★〕



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