彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
私の体重で、床に張り付いて動かなくなる刺又(さすまた)。
「「「なにー!?」」」
「くっそ~なんてガキ・・・ゲホゲホ!」
「赤木先生、しっかり!」
自由になった私に、教師達が距離を取って後退する。
そのままどこかに言ってくれれば嬉しいけど、そうもいかなかった。
「せ、先生方!入り口をふさいでください!」
「え!?ちょっと!?」
むせながらも叫ぶ赤木に、ギョッとする私。
(そんなことされたらー!)
「逃げれないようにしてください!」
「え!?あ、そうか!?」
「は、はい!ただいま!」
「わかりました!」
「ああああああ!?」
赤木の指示で、他の先生達が教室の前後の入り口をふさぐ。
まさしく、肉の壁。
「絶対にお前だけは逃がさんぞ~~~!!」
「ひー!?頑張りすぎでしょう!?」
〔★『いい仕事してるね』、だった★〕
粘る高校教師のおかげで、再びピンチになる。
的確なこと言った後で、赤木は私をにらみながら言う。
「よくも、チョークの粉がたっぷり入った黒板消しを、2つもぶつけてくれたな!?」
「いや、チョークたっぷりは、掃除当番の子がちゃんとしてなかったことが原因では?」
「その通りだけど、大きなお世話だっ!!屁理屈言いやがって~覚悟しろクソガキ!」
正論を言ったのに逆効果だった。
真っ赤な顔で、赤鬼ならぬ赤木がせまる。
(こんな時、瑞希お兄ちゃんならどうしたかな・・・・!?)
“え?逃げ道がない時?”
瑞希お兄ちゃんの教えを思い出す。
“うーん、自力で作って逃げるとかかな?”
はい、それをしてみて怒らせてしまいました。
“あんまり、逃げるのは得意じゃなかったけど・・・不意を突けば、何とかなるかな?”
(・・・『不意』・・・・)
“体と心が丈夫で、運があったら、なんとかなるかな?あははははは~!”
(・・・『運』・・・・)
迫る危険の中、いろんな考えが頭を駆け巡る。
「・・・運。」
(運も実力のうちと、昔の人も言ってた・・・!)
完全包囲の状態から、逃げ出す方法は1つだけ。
(それしか手段はないから、迷ってられない!)
グッと、両手のトンファーを握りしめて叫んだ。
「ごめんなさいっ!!」
「あ?」
ヒュンヒュンヒュン、バキッ!!
「ぐあ!?」
「ぶっ!?」
「おご!?」
両手のトンファーを駆使(くし)して、進行方向にいた先生方をブッ飛ばした。
そんな私を見て、赤木先生が怒鳴る。