彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)
「貴様!?まだ抵抗するのか!?」
「してません!」
足で踏んでいた刺又(さすまた)を蹴り飛ばす。
出来るだけ遠くへ行くようにしたけど、上手く転がらなかった。
「先に手を出したのは貴様!くらえ、正当防衛!!」
そう叫び、素早く掴んだ刺又(さすまた)を私に向けてくる赤木先生。
「かーじょーうー防衛ですよっ!!」
その攻撃を、ひらりとよけて窓際へと立つ。
両手に持っていたトンファーをたたんで、ポケットへ押し込む。
「貴様!?改造武器を持ってるのか!?しまいやがって~何の真似だ!?」
「これだけは言わせていただきます!」
怒りながら問いただす相手に、ビシッと指さしながら言った。
「僕は尾村にケンカを売られた被害者です!つまり、今の赤木先生と同じ立場にあります!」
「なんだとー!?」
「他の先生方も!戦うつもりはありませんでしたが、子供相手に御用グッズは大人げないと思います。」
「笑顔でふてぶてしいことを言いやがった!?」
「お前!反省してないだろう!?」
「いいえ。悪いと思ったので、先に言ったじゃないですか?『ごめんなさい』って。」
「た、確かにそうだったが!」
「ああいえばこう言い、こう言えばああ言い、赤木先生!」
「くああああああ!もう許さん!!」
他の先生からの要請を受け、刺又(さすまた)をかざした赤木先生が私に飛びかかって来た。
「うらぁ!」
「―――――――はっ!」
振り下ろされ、捕まえられる寸前で飛び上る。
「あ!?」
「牛若丸と弁慶か!?」
それは違う。
先生のうちの誰かが言った例えを、心の中で否定する。
もしそうなら、私は赤木先生のすねを蹴らなきゃいけない。
悪いけど、私は牛若丸じゃないからけらない。
この後、私がすることは――――――――――
「――――――――グッドラック!!」
「へっ・・・・!?」
開いている窓の敷居へと着地し、教師達に背を向ける。
身を乗り出して、窓の外を見下ろす。
見覚えのあるヤンキーの集団が映る。
「お、おい!?お前まさか――――――!?」
背後で、カランカランと刺又(さすまた)が床を転がる音がした。
構うことなく、窓から外へ飛び降りた。